お客様から聞かれるのは、難しい質問ばかりではありません。「駐車場はありますか」「このメニューはいくらですか」「予約はどこからできますか」。けれど、同じ案内でも接客中に重なれば負担になります。
そこで気になるのが、自分の店の情報を答えるチャットボットです。ただ、「独自型」「AI搭載」「自動対応」といった言葉だけでは、何を作るのか分かりにくいものです。
結論:独自型とは、自社の情報と運用に合わせて設計すること
本記事では独自型チャットボットを、自社の情報、回答ルール、画面、必要な業務連携を組み合わせた対話の仕組みとして説明します。統一された製品分類ではないため、見積もりでは具体的な内容を確認してください。
必ずしもAIそのものを一から学習・開発するわけではありません。既存のAIやサービスを使い、資料の参照先や案内方法を調整する構成もあります。独自性は、AIの名前より「自店で何を正しく案内するか」にあります。
三つの方式を区別すると、選びやすくなる
実際には組み合わせて使います。料金は確認済みの一覧を表示し、説明はAIが補助し、予約は正式なページへ案内する、といった構成も可能です。最初からすべてを会話で完結させる必要はありません。
自社資料を答えに使う仕組み
例えばOpenAIのFile searchの公式説明では、用意したファイルから関連情報を検索し、回答に利用する仕組みが案内されています。
これは、自店の料金表やサービス案内を探しながら返答する構成の一例です。ただし、ファイルを渡すだけで、最新料金や予約残数を常に正しく答えられるわけではありません。資料の更新と、変わり続ける情報の取得方法を別に設計します。
想定例:富士市の小さな店で、最初に作るもの
以下は架空の店舗の導入例です。FUJI PRESSの導入実績ではありません。
店が最初に対象とするのは「初めて来る人への案内」。回答するのは、通常営業時間、場所、駐車場、主なサービス、予約ページです。個別の値引き、当日の対応可否、苦情への判断は対象外にします。
「今から三人で行けますか」と聞かれたら、現在の空席を取得できない限り、入店可能とは答えません。「この窓口では現在の空席を確認できません。予約ページまたは店舗への連絡でご確認ください」と案内します。
このように、答えられない質問への対応まで決めた段階で、初めて導入範囲が明確になります。
導入前に決める五つのこと
1.利用者と場面
新規のお客様向けなのか、既存客向けなのか、スタッフ向けなのかを分けます。社内向け資料を、公開チャットの参照先へまとめて入れてはいけません。
2.最初に解決したい質問
実際に繰り返される質問を書き出します。件数だけでなく、案内に時間がかかる理由や、間違えた場合の影響も考えます。
3.答えの正本
営業時間、料金、条件について、正式な情報を一つに定めます。SNSと料金表が食い違うなら、AIの設定より前に修正します。
4.人に戻す方法
連絡フォーム、電話、担当者のチャットなど、現実に対応できる窓口を決めます。「担当者につなぎます」と表示するだけで、誰にも届かない構成にしないことが重要です。
5.更新と停止の担当者
料金改定時の修正、会話の確認、障害時の停止を誰が行うか決めます。公開した日だけでなく、翌月も維持できるかを考えましょう。
開発会社へ渡す依頼メモ
対象:初めて来店するお客様
困りごと:同じ来店前質問が、接客中に重なる
回答する情報:確認済みの場所、通常営業時間、駐車場、サービス概要
回答しない内容:個別値引き、未確認の空席、補償判断
案内先:正式な予約ページと問い合わせ窓口
更新担当:店舗責任者
相談したいこと:既製サービスで足りる範囲、追加開発が必要な範囲、毎月の運用作業
これは要件整理の例で、開発を確約する仕様書ではありません。実際の画面と、通常質問・例外質問の返答を見ながら具体化します。
独自開発を急がなくてよいケース
質問が少ないなら、分かりやすいFAQページで十分かもしれません。ボタンから予約ページへ進めるだけで解決するなら、自由入力のAIが不要なこともあります。
既製サービスに必要な資料参照や有人対応が備わっていれば、最初から大きな開発をする理由はありません。独自型と既製型は対立ではなく、どこを自店に合わせるかの程度の違いとして比較すると判断しやすくなります。
よくある質問
Q. ChatGPTの契約だけでホームページに設置できますか?
通常のチャット契約と、公開サイトで動かす仕組みは別です。画面、接続、データ管理、費用などの確認が必要です。
Q. 自社情報を入れれば誤回答はなくなりますか?
なくなるとは言えません。資料の不足、検索の失敗、回答時の補完などをテストします。
Q. 導入すると問い合わせは減りますか?
減る場合もあれば、新しい質問が増える場合もあります。利用者が必要な情報を得られたかと、人の負担がどう変わったかを両方確認します。
Q. 最初に準備するものは何ですか?
よく聞かれる質問と、責任者が確認した回答です。少数でも、正式な答えと更新担当がそろっている方が役立ちます。
関連記事と公式情報
- 関連記事:店舗チャットボットで先に決めたい境界線
- 公式情報:OpenAI File search
まとめ:自店らしさは、答え方と引き継ぎ方で決まる
独自型チャットボットは、万能の店員ではありません。お客様の疑問を整理し、正しい案内や担当者へつなぐ仕組みです。まず一つの場面から、必要な機能を選びましょう。
FUJI PRESSでは、富士市の会社やお店の業務を聞き、既製サービスで足りることと、自社向けの仕組みが必要なことを一緒に整理します。何を作るか決まっていない段階でも相談できます。
著者
渡邉 泰弘|FUJI PRESS代表。富士市で飲食店経営に携わり、Webマーケティング、MEO・Instagram運用、SaaS・AIシステム開発に取り組んでいます。
参考情報
OpenAI:File search(確認日:2026年10月15日)。資料参照の技術例であり、特定構成の導入効果を保証するものではありません。