飲食店や小規模事業の現場では、「あとでメモしよう」と思ったことが、そのまま抜けてしまうことがあります。厨房や接客中、移動中など、パソコンやスマートフォンを開く余裕がない場面ほど、予定やタスクは発生します。
要点
- 音声入力をメモ、予定、タスク候補へ分類し、手を止めずに記録する仕組みです。
- AIが補った日時や宛先を確定値にせず、本人が確認してから予定や通知へ登録します。
- 開発・検証段階の事例であり、削減時間や導入効果を推測して追加しません。
そこで開発しているのが、話すだけで情報を残せるAI秘書です。
解決したかった困りごと
一般的なタスク管理ツールは便利ですが、入力するために画面を開き、項目を選び、文章を書く必要があります。現場では、この数十秒が意外と続きません。
目指したのは、「思いついた瞬間に話すだけ」で記録が残り、その後の整理までAIが補助する仕組みです。
具体的にどう動くか
現在の試作では、小型デバイスから音声を入力し、バックエンド側で処理します。
- ボタンを押して話す
- 音声データをAIで文字起こしする
- 内容をメモ・予定・タスク候補などに整理する
- 予定の場合は日時情報をもとにリマインダー候補として保存する
- 指定時刻になったら端末側で通知する
- 管理画面から、保存されたメモや予定を確認する
「明日の10時に仕入れ先へ電話」と話した内容を、その場で紙に書かずに残せることを狙っています。
使用している技術
現在の構成では、主に次の技術を組み合わせています。
- OpenAI APIを利用した音声認識・内容整理
- Python / FastAPIによるバックエンド
- Next.jsによる管理ダッシュボード
- Railway / Vercelによるクラウド運用
- M5StickS3などの小型IoTデバイス
- Notionや各種業務データとの連携を想定した情報基盤
デバイス、AI、Web管理画面を別々に作るのではなく、一つの業務フローとして接続することを重視しています。
実際に楽になったこと
この仕組みで一番大きいのは、「入力するために仕事を止める」という負担を減らせることです。
音声で残しておけば、後から管理画面でまとめて確認できます。また、メモと予定が混在していても、AIが分類を補助するため、人が最初から細かく整理する必要がありません。
現時点では開発・検証を進めている段階であり、導入による削減時間や売上増加などの数値効果を公開できる段階ではありません。そのため、効果を誇張せず、まず「記録漏れを減らし、後から確認しやすくする」という実務上の価値を検証しています。
富士市の小規模事業者で考えられる使い方
飲食店なら、仕入れ、予約確認、設備修理、スタッフへの伝達事項。建設・修理業なら、現場で思いついた追加作業や部材手配。介護・地域サービスなら、訪問後の記録や次回確認事項など、手がふさがっている現場との相性があります。
業種ごとに必要な分類や通知方法を変えられる点が、汎用的な音声メモとの違いです。
具体例1:仕込み中に出た連絡タスクを、あとから迷わず確認する
富士市内の架空の飲食店で、店主が仕込み中に「明日の午前10時、仕入れ先へ在庫を確認」と話したとします。AI秘書は音声を文字にし、内容を「タスク候補」「明日」「午前10時」「仕入れ先へ在庫確認」に分けて表示します。店主が画面で確認して確定すると、リマインダーへ登録されます。
音声が「明日」としか言わず、録音日時から日付を正しく解釈できない場合は、AIに勝手に補完させず「日付を確認してください」と返します。仕入先名や注文内容を音声に含める必要がなければ、メモには用件だけを残します。通知後は完了・延期を本人が選び、タスクの状態を更新します。
具体例2:打ち合わせ予定は、曖昧な日時を確認してから登録する
小規模な建設会社の担当者が「来週の木曜、現場の打ち合わせを入れて」と話したとします。AIは会話日から候補日を示し、開始時刻、所要時間、参加者、場所が不足していれば質問します。「午後」としか分からない予定を、都合のよい時刻へ決めて登録しません。確定前の候補は「仮」と表示し、担当者が確定してからカレンダーへ反映します。
Google Calendar APIでは、時刻付きイベントにタイムゾーンを指定する項目があり、終日予定と時刻付き予定も別の形式で扱います。海外出張やオンライン会議がある場合は、表示時刻が意図した地域の時間か確認します。Google Calendar API「Events」
音声の便利さは、曖昧な指示を無理に実行することではありません。聞き返し、確認、確定の一段を残すことで、「覚えているはず」を確かな予定へ変えます。
今後の展開
今後は、Notionや社内データ、顧客管理、カレンダーなどとの連携を進め、単なる音声メモではなく、その会社の仕事を理解するAI秘書へ発展させることを目指しています。
フィジカルAIについては現在、活用方法や必要なセンサー、実装方法を含めて取り組みを検討している段階です。
まとめ
AI秘書で重要なのは、AIに会話させることそのものではありません。現場で発生した情報を、その場で残し、あとで使える形にすることです。
FUJI PRESSでは、富士市の事業者向けに、実際の業務から逆算してAI・Web・IoTを組み合わせる仕組みを検討しています。
運用上の確認
録音開始の同意、保存期間、閲覧権限、削除方法を決めます。曖昧な日時、固有名詞、重要度は未確定として本人へ戻し、通知失敗と重複登録を確認できる履歴を残します。
よくある質問
Q. 話した内容は自動で予定に登録されますか?
誤認識を防ぐため、日時、件名、相手、通知時刻を本人が確認してから確定します。
Q. 会話をすべて録音しますか?
必要な操作時だけ入力し、周囲の人への配慮と保存範囲を事前に決めます。
Q. 顧客名や個人情報を話してもよいですか?
利用サービスの取扱いと社内ルールを確認し、不要な個人情報は入力しません。
Q. 音声を誤認識した場合はどうしますか?
元音声または本人確認へ戻り、AIに推測で補完させず、修正履歴を残します。